泡の人
僕はといえば、益々彼とは距離を置きたいと思うようになった。

だから最近は母さんが大量に料理を作ったら、外へと出掛ける。

たまに“逃げないで一緒に食べなさい”と、強制的に一緒になる事もあった。

その時はその時で僕は坂森さんとは目を合わせず、話し掛けられても無視している。

薄情者だと思われたって良い。僕は坂森さんと関わらなければそれで良いのだから。

それの繰り返しが続いて早2週間。呼び鈴が五月蝿く鳴り響いている。

父さんは仕事、母さんは用事があって朝早くから出掛けている。

もう夏休みだと言うのに、レイカはお盆まで帰って来ない。

(部活が忙しいらしい。青春って言うものか)

この家には僕1人。出るしかなかった。そのしつこく鳴り響く呼び鈴を止める為に。

「今日1日付き合え。1分待ってやるから支度しろ」

扉を開け、坂森さんの姿を捉えた瞬間にその言葉が聞こえて。

何故だか脅されているように感じてしまい、訳の分からないまま僕はそれに従った。
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