恋愛指導は秘密のくちづけで
「近藤さん、遅くなっちゃったかな」


進路指導室前の廊下に近藤さんは待っていた。


「今終わったところです。柏葉さん、久々に先生と話せてよかったかな」


「ええ、まあ」


「塚越先生、貴重な時間をありがとうございました」


「丁重に言わなくてもいいですよ。

私も久々に元教え子に会えただけでうれしいものですから。

柏葉にはひとつ貸しがあるんでね。ようやく返せたかなって」


髪の毛に手をやりながら塚越先生は話した。


「それではこれで失礼します」


近藤さんは下に置いていたカバンを手にとり、会釈する。


わたしも会釈した。顔をあげ、塚越先生と視線が合う。


その目の力に心が引っ張られそうになった。
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