恋愛指導は秘密のくちづけで
「ん、まあな」


「先生、覚えていたんですね」


「あのことか。覚えてたよ。学校じゃあ話すわけにはいかないからな」


「誰にも話していませんから」


「柏葉はいい子だからな。先生はわかっていたよ」


いい子なんかじゃない。反論しようとしたがやめた。


「今度よかったらメシでもいかないか。募る話もあるだろうし」


「いいんですか? これでも元教え子ですよ」


「構わんよ。もう卒業したんだし。いつにする?」


「いつにするって……話が早いっていうか」


「嫌ならいいんだよ」


電話口から惑わせるような空気が漂ってきているようだった。
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