恋愛指導は秘密のくちづけで
「あいつもそうだった。俺がちょっと甘い言葉をかけてやりゃあホイホイついてきたよ」


「あいつって、冬の教室で見た、あの桜木さんのことを言ってるんですか」


「ああ。おまえも欲しいんだろう。自分の中に俺を」


「……いらない」


「嘘だね」


脂ぎったてのひらでわたしの肩をさする。さすったとたん、寒気が走った。


「俺としたかったんだろう。したくて、したくてたまらなかったんだ」


「違う。違います。ただわたしは先生と仲良くしたかった、それだけです」


「そうやって殻に閉じこもってばかりだからダメなんだよ。俺が殻をやぶってやろうか」
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