恋愛指導は秘密のくちづけで
ちょうどバスターミナルにつくと自分の乗りたかったバスがたくさんの人を詰め込んで発車したところだった。


一人、ベンチに座る。


自分自身が雨によって洗い流してくれたらいいのに。


そう思いながら、カバンから取り出した赤いメガネをかける。


目の前は自分のことを思ってくれるかのように、雨が涙を流すように降り続く。


くだらない昔の恋に興じた自分がいけなかった。


恋をしなければ、誰も傷つきはしなかったのに。


そう思った瞬間、くちびるがびくんとうずく。


忘れられた感情の扉を無理やりこじ開けられ、押し込められた欲望の牙がむかれた、そんな感情がわきおこってきた。
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