聴かせて、天辺の青
川沿いの土手には、等間隔に並んだ桜の木。ライトアップされた桜の花が、白く輝いて眩しい。
土手にはブルーシートを敷いて陣取った何組かのグループがいる。その中に見知った顔を探しながら車を停めた。
アウトドア用の座卓を繋ぎ合わせた上には、既に溢れるほどの料理が並べられている。どれも売店の隣の食堂で作られたもの。
売店と食堂の従業員は合わせて20名、そのうちパートのおばちゃんと子持ち主婦が参加できないから15名の宴会だ。
「あの二人はまだか? 今日ぐらい早く閉めたらいいのになあ」
二人とは海斗と河村さんのこと。待ちきれない厨房のおじさんが、缶ビールをくいっと仰いだ。後に続けと、プルトップを開ける音が響き始める。もう、こうなっては仕方ない。
「海棠さんも飲める人? ビール? チューハイもあるけど?」
どちらかと尋ねながらも、おじさんはビールとチューハイの両方を彼に押し付けるように持たせた。さらに困惑する彼の顔を覗き込んで、おじさんはにやっと笑う。
「今日の主役なんだから、遠慮しないで飲んでよ! 花見はオマケだから」
「あ、はい、ありがとうございます」
困惑していた彼も笑って返す。
「言っておくけど、まだ酔ってないから」
とおじさんは彼の肩をぽんっと叩いた。