聴かせて、天辺の青


「俺はな、犯人はこの辺りの人間じゃないと思うんだ、たぶん通りすがりに衝動に駆られたんだよ」


海斗にもたれていたおじさんが、ゆっくりと顔を上げた。皆の反応を確かめるように見回して、ニヤッと笑う。


「どうして?」


と、海斗がおじさんの顔を覗き込んだ。おじさんは待っていたと言いたげな顔。


「あの店は海沿いの県道沿いだろ? 県道は高速道路を走らないケチなトラックが多い。特に夜中な、駐車場にトラックが何台か停まってて仮眠取ってるんだ」

「だから、うちの店の駐車場は夜中はチェーン張って、入ってこないようにしてるのよ。昼間ならまだしも、夜中の知らないうちにゴミ捨てられたりするの嫌でしょ」


河村さんが口を尖らせて、手にした紙コップのビールをくいっと仰いだ。


そういえば昔、夜中に粗大ゴミなどを捨てられると聞いたことがある。対策として夜中は駐車場の出入口にチェーンを張り、建物周辺にはセンサーライトと設置したんだと。


「いや、河村さん、ゴミは関係ないって……」


話を逸らされてたおじさんが苦笑する。河村さんは手を挙げて、ゴメンと舌を出した。まだ飲み始めたばかりなのに、頬が赤く染まっていて可愛らしい。


そんな河村さんにおじさんは目を細めて、再び話し出す。


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