聴かせて、天辺の青


「トラックが皆怪しいとは言わないけどな、トラックみたいに他県から来た奴が、たまたま休憩した時に、ここなら……思ったんじゃないか?」


言い終えたおじさんは、ぐるりと皆を見回した。


でも、何かおかしいと思った。何がおかしいのだろうと考えようとしたら、


「おっちゃん、ちょっと待て。それは違うんじゃない? 犯人は走って逃げたって聞いたけど?」


と海斗が言った。
そうだ、それだ。犯人は何も盗らないで走って逃げたと聞いてたから。


得意げなおじさんの顔が、みるみる崩れていく。


「あ……そうだったか?」

「そうだよ、車置いて逃げたなんて聞いてない」


首を傾げて恥ずかしそうなおじさんに、海斗は追い打ちをかける。二人を見ていた河村さんが、クスッと笑い出した。


「だけど、おっちゃんの言うように、この辺りの人じゃないことは確かね。きっと従業員も私たちみたいな地元の人だろうから、この辺りの人ならすぐにバレるわ」


さすが、ナイスフォローだ。


ふと気になって見たら、彼は紙コップの中をぼーっと覗いている。話を聞いているのかいないのか。もし彼が犯人なら、何を考えながら皆の話を聞いているんだろう。




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