聴かせて、天辺の青
甘いものを食べたいけど、男ひとりで注文するのが恥ずかしい。だから、私を巻き添えにしようとしているのかもしれない。
「私はいらない、お腹いっぱいだから」
食べたかったら注文して食べたら? と、付け加えようと思ったけど止めた。
余計なことを考えさせないで、早く言いたいこと言ったら?
誘ったのに話さないって、どういうつもりなのか。苛立ちは募るばかり。
彼はまだ、メニューを睨んでいる。
「じゃあ、何か飲む?」
まったく、しつこい。
そのくせ、一目も私の方を見ようとしない。見てもらいたい訳じゃないけど、ちょっと失礼だと思う。
「ううん、お水でいい」
いつも素っ気なく返されるから同じように言い返してやったら、彼が顔を上げた。ちょっと言い方がキツかったかもしれない。
と思ってたら、ここに来て初めて彼と目が合った。
彼は私を見つめたまま、ゆるりと口角を上げて頷く。
何? いきなり話し出すつもりになったのかも……と、とっさに身構えた。
彼の唇が開いて、息が漏れる。