聴かせて、天辺の青
「どうして知りたいの?」
「さっき言っただろ? アンタのことを知りたいから。抱え込んでるより、話した方がすっきりすることだってある」
「あなたに言われたくない」
「俺だって言いたいんだ」
まったく……頑として引き下がらないつもりらしい。
大きく息を吐いたら、彼が立ち上がった。何も言わず自分と私のカップを持って、ドリンクコーナーへと足早に向かう。
また何かするんじゃないかと思って、警戒したのに少し拍子抜け。
一晩明けて、彼は変わったと思う。無愛想さが抜けた……というか、口数が増えた。変化の要因は何だったんだろう。
考えているうちに、彼が戻ってきた。足取りまで軽くなったように見えてくるのは、きっと気のせい。
目の前に滑らせるようにカップが置かれた。ふわりと立ち上る香りに意識を取られていると、視界に飛び込んできた彼の手に驚いてテーブルの上に置いた手が跳ね上がる。
一瞬、彼が笑ったように見えた。
「はい、ミルクだけでいいんだろ? これ、もらうから」
と言った顔から既に笑顔は消えて、さっき私が使わなかったスティックの砂糖を奪っていく。
「なあ、話してよ。仕事辞めたことと、エイジと別れたことって、関係あるの?」
カップに差したスプーンをくるくると回しながら、彼が私を見つめる。