聴かせて、天辺の青
彼の顔は至って真面目で、ふざけているような様子は見られないけど、警戒してしまう。知りたいなんて言いながら、自分と同じだとか言いながら、本当は私のことを笑いたいだけなのかもしれない。
彼がくいっと首を傾げる。
そんなに知りたいのなら教えてあげよう。笑いたいなら、笑えばいい。
「仕事を辞めたのは本当に人間関係の問題。私、課長と不倫してるって噂を立てられたの、それで仕事を辞めた」
あれは入社二年目の課の忘年会。
金曜日だということもあり、いつになく盛り上がった勢いで、唯一の同期の男子と先輩のお姉さん方二人と課長と私の五人で二次会に行った。
酔い潰れたお姉さん方のうち、一人は彼氏に迎えをお願いして、もう一人は帰る方向が同じだという同期の男子が送ることに。私もまた、帰る方向が同じだからという理由で課長と一緒に帰ることになった。
私は酔い潰れるほど飲んではいなかったけど、ふわふわして足元が覚束なかったのは事実。それでも意識ははっきりしていたし、会話の内容も覚えている。
課長とはアパートの近くまで送ってもらったけど、特に何にもなかった。
週明け、出社した私は事務所の空気が変わっていることに気づいた。