聴かせて、天辺の青
最初の異変は、お姉さん方に挨拶したのに無視されたこと。口を噤んで腕を組み、じっと私を見据えるお姉さん方の目には敵意しか感じられない。突き刺さる視線に耐えられず、私は更衣室に逃げ込んだ。
するとロッカーの扉に、『あれから課長と?』と書いたメモが貼り付けられていた。
すぐにお姉さん方の仕業だとわかった。
お姉さんのひとりが、ずっと前から課長に好意を寄せていることは知っていたから。
今は妻子持ちの課長だけど、結婚前にお姉さんと付き合っていたと社内のおじさんから聞いたことがある。結局お姉さんはフラれて、課長は別の女性と結婚したのだと。
それでもまだお姉さんは未練があるらしく、社内で課長に近づく女子に目を光らせている。一応、私も気にしていたはずなのにミスを犯してしまったのだ。
あの時、酔い潰れたお姉さんは同期の男子ではなく、課長に送ってもらいたかった。それなのに、帰る方向が同じと理由で私が課長に送ってもらってしまったことが私のミス。
お姉さんが誤解しないはずはない。
いや、誤解というよりも単なる嫉妬でしかない。
私に遠距離恋愛している彼氏がいると知っていても、そんなことはお姉さん方には通用しない。
噂は、あっという間に社内に広がっていった。