聴かせて、天辺の青
首を傾げて話を聴いていた彼が、ゆるりと頭を起こした。テーブルの上に置いた腕を組み直したけど、私から目を離さない。私を見る目には、私に対する同情が滲み始めている。
恥ずかしい。
でも、ここまで話してしまったのだ。もう引き下がれない。
「課長は? 否定しなかったの?」
続きを話そうとしたら、彼が尋ねた。穏やかな声に感じ取れる確かな哀れみが、こそばゆい。
「否定してくれたけど、どんなに本人が否定しても意味ないでしょ? 誰も信じるはずない」
「同期の彼は? 助けてくれたんじゃないの?」
「助けてくれたけど……それもお姉さんには気に入らなかったみたい。私がいろんな男をたぶらかしてるって言い始めて……同期の彼女の耳に入って、彼女が私に文句言いに来たしね」
「その彼女は、社内の人?」
「ううん、社外の子。退社時に会社の前で待ち伏せしてて、一方的に言いたいこと言われた後、思いっきりビンタされた」
自分の左の頬を指差して笑った。
あの時の痛みが蘇る。
視界が僅かに揺らいだのに気づいて、とっさに目を逸らした。
その瞬間、頬を指した手に彼の手が触れて、ぎゅうっと掴まれた。