聴かせて、天辺の青
「エイジには、何て言った? 電話掛かってきたんだろ?」
彼の静かな声に抑揚はない。
だけど答えを強要されているみたいに、握り締めた手はさらに力強さを増していく。
じっと見つめられているのに、目を逸らすこともできない。
「携帯電話の電源を入れたのは次の日の朝、職場に連絡するため。英司からメールが届いてたけど返信しなかった、着信もあったけど出なかった」
その日は一日中、英司からのメールや着信を無視し続けた。一応気にしてくれているのか頻繁に連絡をくれるけれど、私の中で生まれた迷いが英司を受け入れることを拒んでいた。
英司は悪くない。
仕事中に電話を掛けた私が悪い。
言い聞かせようとする気持ちと、仕事よりも私を選んでくれなかったという気持ちがぶつかり合っていた。
大人気ないということは、よくわかっている。頭ではわかっているのに。
私は、馬鹿だ。
「でも、会う約束してたんだろ?」
彼の目に滲んでいるのは同情。
それを知っていてもなお、私は最後まで話すことをやめようとは思わなかった。むしろ最後まで聞いてほしいとさえ思ってしまう。