聴かせて、天辺の青


『どうして?』と言いたそうに、彼が私を見つめてる。まるで責めてるみたいな視線が痛いほど。


「体調が悪いと言ったら、見舞いに行くって言うかもしれないから。職場行事なら仕方なく諦めるでしょ?」

「だけど切符は? 前日なら買ってたんじゃないのか?」

「大丈夫、英司は絶対に事前には買わない。急に仕事が入って行けないって言うこともあったから、必ず当日に買うの」


そう、今まで会う約束をしていても何かと理由をつけてドタキャンするのは英司。理由と言っても仕事なんだけど。


期待を裏切られる気持ちを少しぐらいわかればいいんだと思ってしまったのは事実。


私からドタキャンしたのは今回が初めて、最初で最後のつもりでいた。既に私の気持ちは決まっていたから。


最初から遠距離なんて間違っていたのだろう。英司が東京の大学を受験すると言った時点で、私たちは終わっていたんだ。


学生の頃は単純だった。会いたいと言うだけで、何も考えずにすぐに駆けつけてくれた。だけど、社会人は違う。


そんな事情ぐらい、十分わかっているつもりでいたのに。英司に対して期待するものが、大き過ぎたんだと思う。


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