聴かせて、天辺の青


会いたいなんて、もう言わない。


田舎に帰ろう。自分から会いたいなんて言い出さなくてもいいように。田舎に帰ったら、英司じゃなくても支えてくれる人たちがいる。


英司を頼るのはやめよう。
英司を縛るのはやめよう。


とうとう英司には仕事を辞めたことを告げることなく、私は田舎に帰った。


いつも通り何事もなかったように英司とメールのやり取りはしていたけど、以前ほど気持ちが高揚することもなくなって。それが英司に対する私の気持ちなんだろうと気づいていたのに、別れも切り出せないまま。


家に引きこもって、だらだらしてばかりの毎日。帰ってきたからと友人に連絡するわけでもなく、両親が何にも言わないのをいいことに堕落した生活を送っていた。


仕事もしないで半年ぐらい経った頃、母親の買い物の付き合いで道の駅に出掛けた時に海斗に会った。忙しく働いている海斗を見ていたら、今の自分が恥ずかしく思えて。海斗に、仕事を辞めて帰ってきたことを打ち明けた。


「それで、藤本さんが道の駅で働くことを勧めた? エイジはどうしたの? 半年も経ったら、いい加減にバレるだろ?」


彼の穏やかな声が、私の気持ちを落ち着かせようとしてくれている。


だけど、話したくない気持ちがまた込み上げてきてる。


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