聴かせて、天辺の青
目を伏せようとした私の手を、彼が強く握り締めた。目を逸らそうとする私を引き止めるように、落ち込んでいく意識を引き摺り上げるように、強く強く。
「似てるような気がしたんだ、根拠はなかったけど……ただ、なんとなく、俺に近いんじゃないかと思った」
彼の口にした言葉の意味がよく分からない。誰が自分に似ていると言いたんだろう。と思っていたら、私の疑問を察して彼が口を開く。
「俺も同じ、逃げてきた。上京して失敗したけど、親は上京に反対してたから地元には帰れない。アンタが羨ましいよ、帰る場所があるから」
羨ましいと思う気持ちと慰めから出てくる同情は、少し似ていると思う。羨ましいと言われながらも安心できない。
きっと彼が本気で羨ましいと思っているからではなく、私の方が自分よりはマシだと慰められているように感じられるから。
そんな風に感じてしまう私が、ひねくれているのかもしれないけど。
「似てないじゃない、私は田舎に帰った。あなたは田舎に帰らなかった」
「逃げ出したのは同じだろ? それに……エイジのことも似てる」
「英司のこと? 田舎に彼女が居たの?」
問い掛けると、彼は小さく頷いた。