聴かせて、天辺の青
「やっぱり違う、英司は迎えに来るなんて言わなかった。きっと帰ってくると言った。それに私は、迎えに来て欲しかったんじゃない」
「変わらないよ、俺は彼女を捨てた。アンタは英司を捨てたんだ」
そうだ、捨てたのは私。
私から英司を捨てた。
一番そばに居て欲しい時に居てくれなかったから、どんな時でも伝わると思っていたのに伝わらなかったから。
決して拗ねてたんじゃない。
初めて望んでしまった時に、肝心な時に助けてくれないなら要らないと諦めてしまったんだ。
海斗の紹介で働き始めてから、英司との距離をさらに置くようになった。自分からメールの送信や電話を掛けることもしなくなったし、返信することも電話に出ることも故意に減らして。
それでも英司は特に気にすることもなく、自分のペースを崩さない。私の変化に気づいていないようだった。
会わなくなって半年も経っているのに、不審に思わないなんて。普通なら怪しむと思うのに、英司は何も追及しない。
田舎に帰って初めて迎えた年末、ようやく英司に会うことになった。
『田舎に帰ったら、ゆっくり会いたい』英司から帰る前にメールが届いていたから、覚悟はできていた。すべてを打ち明けるんだと。