聴かせて、天辺の青


静かに頷いた彼の視線は、未だ私に注がれたまま。握り締めた手は一定の力を保っている。おかげで少し汗ばんできているけれど、解くことはためらわれた。


できれば、まだ離さないでいてほしい。一通り、話し終えるまでは。


ゆっくりと、彼の唇が開く。


「エイジは、気づいてたんだろ? アンタが仕事辞めたことも、アンタの気持ちも」

「うん、『やっと話してくれた、もっと早く言ってほしかった』なんて言って、顔色も変えなかった。知ってたなら言ってくれたらよかったのに……ね? 知らないフリしてる方が酷いと思う」


笑い飛ばしたいのに、語尾の辺りで声が震えた。察したのか、彼が強く手を握り締める。


まっすぐ見つめる彼の目に、何もかも見透かされそうで怖い。


「思ってることを口に出すのは、そんなに簡単なことじゃない。アンタもよくわかっているだろ?」


彼の言う通りだ。


あの時、『会いたい』と英司に言えたのは苦しさの末、ようやく吐き出すことができた言葉。今までに言いたいと思ったことは何度もあったけど、抑えることができていた。


抑え続けていたのに……
ついに抑えられなくなって口から出たのが、『会いたい』という一言。


それを英司に否定されてしまった結末。




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