聴かせて、天辺の青
「わかってるよ。だから、もういいと思ったの。言いたいことも言えないのなら、別れようって。私から言ったの」
互いを縛るのはやめよう。
一度掛け違えてしまった気持ちを修復することは、年月を重ねるほど難しくなるものだとわかったから。
私の出した決断に、英司は何にも反論しなかった。寧ろ、ほっとした表情を見せる英司に私も安心していたし。
引き止めないでほしいとは思わなかったけど、英司の顔を見た私には腹立たしさよりも落胆の方が大きかった。
救いだったのは、英司のくれた言葉。
『俺たちはずっと幼馴染みだ、俺は家族みたいな存在だと思っている』
ここに帰ってきた時には今まで通り、ご飯を食べに行ったり出掛けたりしたい。自分の気持ちは何も変わっていないから、と英司は微笑んでくれた。
私たちの話を台所で話を聞いていたおばちゃんは声を上げて驚くこともなく、静かに私たちを見守っていた。
いつか、こうなることを予見していたんじゃないだろうか。