聴かせて、天辺の青
やがて開けた視界に、白み始めた空と海原が現れる。大浜湾の穏やかな海原に、点々と揺らめいているのは漁船の灯り。
私は自転車を停めた。
手前の交差点の信号機は、赤色の点滅。
横切る海岸沿いの国道を走る車の数は、早朝だから少ないけど結構スピードを出している。微妙にカーブを描いていて見通しが良くないから、車が途切れたからといって急いで渡るのは危険だ。
押しボタンを押して、信号が青に変わるのを気長に待とう。
交差点の真正面には大浜湾上を渡る白瀬大橋、その先に大見半島の大きな黒い影。
それらが目に映った途端に、潮の香りがさらに強さを増してくる気がする。同時に、いつもと変わらない景色に込み上げる安心感。
毎朝通るこの道は仄暗くても、怖いと思ったことも不安を感じたこともない。