聴かせて、天辺の青
一階に降りていくと、彼はまだ和室に座っていた。窓から差し込む柔らかな日差しが縁側を眩しく照らし出している。
開け放たれた真っ白なカーテンの裾が、時折ひらりと風に舞う。緩やかな風が部屋の中を通り抜けて、彼の髪を揺らして心地良さげに見えた。
あんなに憎たらしい事を言ってたのに、穏やかな横顔。
「瑞香ちゃん、ちょっといい?」
台所からおばちゃんが手招きしてる。おばちゃんも、ちょうど片付けを終えたところらしい。
「どうしたの?」
尋ねると、おばちゃんは私を連れて奥の部屋へと向かう。
「彼がね、今晩だけ泊まりたいって言ってるから、部屋に案内してあげてくれる?」
「え? どうして?」
思わず聞き返した。
「うん、服が乾くのを待ってるって。それに、一晩経ったら気持ちも落ち着くだろうから、いいんじゃない」
部屋の戸棚から取り出した鍵を手渡して、おばちゃんは優しい笑みを見せる。
鍵には水色の丸いキーホルダーがぶら下がっていて、部屋番号が書いてある。『25』と。
鍵を受け取ったものの、不安は拭えない。一晩とはいえ、見ず知らずの若い男性を泊めるなんて。