聴かせて、天辺の青
すぐに海斗の車が減速する。
前方に見えるコンビニの駐車場の端で、手を振っているのは河村さん。
河村さんの家は、このコンビニの後方に広がる住宅地の中にある。海斗はコンビニの駐車場に車を停めた。
「待ってて、すぐ戻る」
一言告げた海斗は、エンジンをかけたまま車を降りる。ドアが閉まるタイミングで、弾むように歩き出す。
それを見た河村さんの顔に笑みが零れる。もし私が居なければ、ここで海斗と抱き合っていたかもしれないと思うほどの笑み。
二人の仲を実感して、じんと胸が熱くなる。
同時に、どうして来てしまったんだろうと僅かな後悔までもが生まれてる。シートの背もたれを倒して、隠れてしまいたい気分。
だけど、今更どうしようもない。
河村さんだって気づいてるんだし、助手席で息を潜めて待つしかない。
駐車場に停まった車や店を出入りする人たちを眺めて、いろいろと考えていた。
海斗のこと、河村さんのこと、道の駅に残してきた彼のこと。
彼は今、何をして待っているんだろう。