聴かせて、天辺の青
おばちゃんの家に帰ったら、彼に少しでも聞いてみよう。今なら、何か話してくれそうな気がする。
根拠はないけど、そう思えた。
きっと彼にも抱えているものはあるはず。彼が私に尋ねたように、聞き出したように、私も彼に尋ねてみるんだ。
窓の向こうに並んだ海斗と河村さん。私を見て、にっこりと笑った河村さんは輝いている。
職場では見たことない眩しい笑顔。
そう思ってしまうのは、海斗と河村さんの関係を知ってしまったからだろうか。
35歳の河村さんと26歳の海斗。
ふたりの年の差は9歳。
もし自分だったら……と考えると、相手はまだ17歳の高校生? それは……ちょっと考えられないけど、河村さんの笑顔を見ていたら、年の差なんて気にならないぐらい仲良さそうに見える。
でも、河村さんには小学二年生の娘さんがいる。本当に離婚を考えているとして、娘さんはどうなるんだろう?
私の考えるべきことじゃないけど、気にならないわけがない。海斗は、ちゃんと考えているんだろうか。
考え巡らせる私へと、河村さんが駆けてくる。河村さんの後ろからは、海斗がゆったりと歩いてくる。