聴かせて、天辺の青


ここで、変な気を起こされても困る。そうでないとしても強盗か何か良からぬ事を企む可能性も捨てきれない。


考えるほどに、不安ばかりが込み上げる。


「本当に大丈夫?」

「大丈夫よ、変な気を起こさないように、ちゃんと私が見張ってるから」

「そうじゃなくて、おばちゃんと二人きりになるけど……大丈夫? もし変な事企んでたらどうするの?」

「心配しないで、今日は健(けん)さんが来てくれるから、瑞香ちゃんは安心して仕事に行っておいで」


と、おばちゃんは余裕の笑み。


健さんこと今安健(いまやすけん)さんは、おばちゃんのご近所さん。おばちゃんの旦那さん、亡くなったおじちゃんとは同級生で幼馴染み。


おじちゃんが亡くなってからは、よく酒屋やおばちゃんの手伝いに来てくれている。頼りになるご近所さんだ。


「それにね、私には彼がそんな悪い子には見えないの。きっと何か……いろいろあって、ささくれているだけだと思うの」


ゆっくりと言い聞かせるように話すおばちゃんの目は、優しく私を見つめてる。


「うん、わかった。部屋に案内してくるね」


そこまで言うなら、きっと大丈夫。


私は鍵を手に、彼の居る和室へと戻った。


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