聴かせて、天辺の青

だけど、少しだけ安心。
おばちゃんが、『私も』と言った意味がわかったから。



帰ってきた彼は、体調が優れないから早退したとでも言ったんだろう。ということは、彼は部屋で休んでいるのかもしれない。



「ごめん、大丈夫。ただいま、彼は部屋にいる?」

「いるよ、帰ってきてからずっと部屋に篭ってるよ、辛そうな感じだったから寝てると思うけど」



おばちゃんの返事を聞きながら二階に向けて耳を澄ませてみたけど、物音は聴こえない。本当に彼が部屋に居るのか、疑うつもりはないけど……



「そう、お昼ごはんは食べた? 何か言ってなかった?」



そっと靴を脱いで和室に滑り込んだ。顔を近づけて声のトーンを落としたら、おばちゃんが察して顔を寄せてくる。



「いや、何にも聞かないけど、何かあったの?」

「うん、ちょっと……、たいしたことじゃないんだけど」



ここまで言ったのに隠しておくのは心苦しい。普通の知り合いならともかく、おばちゃんには隠しておけない。



おばちゃんの部屋へと移動して、今日のことを話した。声が漏れないように固く戸を閉めて、おばちゃんの耳元に手を当てて小さな声で。






< 239 / 437 >

この作品をシェア

pagetop