聴かせて、天辺の青
今朝のことを話している間、おばちゃんは黙って耳を傾けてくれている。時々顔色を曇らせて目を閉じたり、言いたいことを抑えるように口を結んだり。
「彼女たちは、彼のことを知っていて声をかけたんだと思う。それが当たってたから彼は、あんなに強く否定したんだと思う」
おばちゃんは頷く。
噛み締めるように。
あくまで、私の想像。
私目線からの見解。
実際は、どうなのかわからない。
だけど全力で否定した彼の声は、突きつけられた事実を払い除けてしまいそうなほど強くて。
言い放った直後、彼が必死で堪えていたのは駆け出してしまいたい衝動。目の前にいた女性らを突き飛ばして、駆け出してしまいそうな気がしていた。
何故、そこまで否定することがあるんだろう。
疾しいことがあるから?
と思ってしまったら、胸が締めつけられて苦しい。
「彼は何て答えたの? 後で彼に聞いたんでしょう?」
胸を締め付けられる気持ち悪さを吹き飛ばしてくれたのは、おばちゃんのやんわりとした声だった。
肩に落ちた髪を払ってくれるように、そっと優しく。温もりが体の奥へと染みていく。