聴かせて、天辺の青


「空気の入れ替えのために少しだけ窓を開けておくけど、寒くなったら閉めてね」


窓を少し開けて、網戸にして振り向いた。


だけど、やっぱり彼はぼんやりとしたままで、話を聞いているのか聞こえていないのかわからない様子。


部屋の畳を見ているのだか、ちゃぶ台の角を見ているのだか、どこを見てるのかもわからない感じ。


聴こえてないとしても、とりあえず私は言っておくべきことだけ言っておこう。


「晩ご飯は6時頃にはできてるから、1階のさっきの和室に降りてきて。お昼ご飯は外に出て食べてもいいし、少し歩いた所にお弁当屋さんもあるし、おばちゃんに用意してもらうこともできるけど、その場合は早めに言ってね」


って、言ってるのに返事はない。
いったい、どういうつもりなんだろう。


私はちゃぶ台の上に、部屋の鍵を置いた。わざと音を立てるように荒っぽく。


「聞こえてる? 何か質問はある?」


ゆるりと彼が顔を上げる。


「そんなに大きな声で言わなくても、ちゃんと聞こえてるよ」

「だったら、どうして返事ぐらいしないの? 聞こえてないのかと思って当然でしょう?」


さらりとかわすような言葉が腹立たしくて、私は語気を強めて返した。言い返すなら言い返せばいいと、心の準備をしながら。


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