聴かせて、天辺の青
◇行き場のない心
おばちゃんの家から1キロほど西に走ったところに、道の駅がある。
海岸線と並走する国道沿いにあって、大型バスやトラックも駐車できる広大な駐車場と海に面した白い壁の建物には市場とレストランが入っている。
毎朝近くの漁港で揚がった魚や地元の農家の畑で採れた野菜、お饅頭などの手作りの品が店頭で売られている。近隣地域の伝統工芸品の展示販売や土産物などもある。
今はオフシーズンだから平日の観光客は少ないけれど、土日や夏休みには遠方から多くの観光客が訪れて賑わう。
市場に併設しているレストランは海側に大きな窓とオープンテラスがあり、入江から半島までを見渡すことができる。天気のいい日にしか見えないけど、水平線に沈む夕日は絶景だ。
私は昼間、この市場とレストランでアルバイトとして働いている。
「おはようございます」
着替えて事務所に入ると、主任の河村さんが電話しながら立ってる。ひらりと手を挙げたから会釈で返したら、その手で髪をかき上げる。
すらりとした長身にショートヘアがよく似合う35歳、ちょっとした仕草なのに十分な色気を感じさせる。小学二年生の女の子のお母さんには、とても見えない。