聴かせて、天辺の青
厨房で仕込みの手伝いをしていると、海斗がやって来た。意外と早かったから驚いた。
ちょうど私は今朝搬入された配送箱を、厨房へと運んでいたところ。
食材が詰め込まれた大きな配送箱を持ち上げようと、よいしょっと踏ん張る肩を叩かれた。
振り向いたら、
「遅れてごめん、これ、俺が持ってくよ」
と海斗が笑って、ひょいと配送箱を持ち上げる。いとも容易く軽々と。
海斗も英司と同じぐらいの背格好、二人とも小学生の頃から柔道をしていたから逞しくて頼もしい。
私も他の配送箱を抱えて、すたすたと歩く海斗について行く。
「ありがとう、そんなに渋滞してたの? 大変だったね」
「ああ、そうそう。大亀でコンビニ強盗があって、犯人が国道を東に逃走したらしい。それで東行きで検問してたから大渋滞だよ」
背筋がぞくっとした。
大亀までは電車で約30分ほどだから、そう遠くはない。そんな近くで強盗なんて、今まで聞いたことがなかった。
「コンビニ強盗? 怖っ……それ、今朝のこと?」
「うん、深夜3時から4時ごろだって言ってた。でもさ、結局何も盗らずに走って逃げたんだって。バカな奴だよなあ」
海斗は笑い飛ばして配送箱を下ろして、私から配送箱を取り上げる。