聴かせて、天辺の青
英司と海斗の弟はともかく、彼のことは何とも許しがたい。東京に帰るとは言ってなかったけど、良かれと思ってした事に対してあんな言い方するなんて。
たとえ私の勘違いだとしても、もっと他に言い方はなかったのか。思い出したら、余計に腹が立ってきた。
「瑞香?何で不機嫌になってんの?」
海斗が不思議そうな顔で問い掛ける。
配送箱を持ち上げようとして屈んだまま、固まってる私は不自然に思われても仕方ない。
恥ずかしさを覚えながら、もやもやする気持ちを飲み込んで平静を装う。
「えっ……うん、今朝変な人に会ってね、あんまりにも話し方がエラそうで、気に入らなかったのを思い出しただけ」
「へえ、そいつに注意してやったの?」
「注意なんかしないよ、相手になんかしてない。話しても無駄みたいな感じだったし」
「そっかぁ……瑞香が黙ってたとは思えないけどなぁ」
海斗がにやりと笑う。
まるで見透かすような目で、私を覗き込む。
さすがに海斗、私の性格をわかっているらしい。
海斗の言う通り、私は黙ってなかった。言い返したつもりだけど、未だにすっきりしていない。
でも、もう今ごろ言っても効果なんてない。彼は忘れているに決まってる。