聴かせて、天辺の青
「おっ、すごく懐かしい歌かも。これ、俺らが高校生の頃の歌だろ? 二年……いや、三年の頃だった? 飲料か何かのCMのタイアップじゃなかった?」
「CM? ああ、そういえば……飲料だった?シャンプーじゃなかった?CMソングだったのは覚えてるのになぁ……」
そうだ。
CMソングだったから、普通に聴く以上に耳にする機会が多かったんだ。テレビを観てたら、勝手に流れてきたんだから。
でも、印象に残っている理由はそれだけじゃない。
あの頃の私の思い出と、思いきりタイアップしていたから。
高校三年生になって、ようやく私は進学することを決めた。志望校に選んだのは、隣県の中心部にある短大。
この町は県の西の端にある。
東西に長細い形をした県の中心部は東の方にあって、この町からは電車で約三時間掛かる。
隣接県の中心部へは二時間ほどで行くことができて、自分の県の中心部に行くよりも近い。
それでも自宅から通うのは無理だから、学校の寮かアパートを借りて一人暮らししなければならない。
それが進学を決められなかった理由だった。
この町から進学する場合、ほとんどの人が自宅を離れる。学生の間だけの一時的な人もいれば、そのまま就職して帰ってこない人も多い。