聴かせて、天辺の青
朝一番のお客さんの波が引いて閑散とした店内で、商品の補充を始める。
海斗と海棠さんが運んできた配送箱から、私が商品を出して陳列棚に並べていく。単純な作業を繰り返しながら、何気なく店の外へと視線を向けた。
ガラスの向こう側は店内とは別世界。澄み切った空から降り注ぐ眩しい日差しが、何に遮られることもなく満ち溢れている。
ちかっと真っ白い光が視界に飛び込んだ。
目を細めた先にはシルバーの小型車。ちょうど駐車場に入ってきて、停車するところらしい。ゆっくりとバックして停まった車を見て思い出した。
以前、海斗が話していた怪しい車だと。
きっと運転席に乗っているのは……
いつの間にか品出しをしていた手が止まり、駐車場に停まった車を窺いながら店の出入り口の近くへと向かっていた。運転席に座っている女性が首を傾けて、店内を気にしている。
「また来てるだろ?」
ふいに頭上から降ってきた声に体が跳ねる。予想しなかった声の正体は海斗。店の裏側で配送箱を運んでいたのに、急に現れるから驚いた。
見上げた海斗は、私ではなく駐車場の車を険しい顔で睨んでいる。
「ずっと? 今ぐらいの時間に来てるの?」
「そう、あそこが定位置なんだよな、そろそろ警察に通報しようかって河村さんと話してたところなんだ」
警察だなんて、いきなり物騒なことを言いだすから体が強張ってしまう。