聴かせて、天辺の青
「一からやり直したかった……、彼女なりの身の引き方ですか」
「だろうな、彼女なりにきっちりと清算したかった結果じゃないかな」
すべてを理解したような海棠さんの言葉に同調した海斗は、ぐるりと駐車場を見回した。駐車場にはお客さんの車も彼女の車も停まっていない。もう明日からは彼女の車が停まることはないだろう。
だけど彼女に別れを告げられ河村さんのた旦那さんは、どうするつもりなんだろう。まさか河村さんとよりを戻すなんてことを考えたら、海斗と河村さんの将来に関わるのではないか。
などと新たな不安が次々と湧き上がってくる。
「心配するなよ、俺が絶対に守ってみせるって言っただろ?」
私の肩に手を載せた海斗は得意げな表情。河村さんと彼女が話しているのを待つ間に言ったのと同じ自信に満ちた言葉とともに、きゅっと口角を上げた笑顔は私の不安なんて簡単に掻き消してしまう。
「うん、海斗ならできるよ」
自然と出てきた言葉は、海斗だけに向けたものではない。私から海棠さんへの気持ちと決意も込めて、強く大きく言い切った。
海斗が河村さんを守るように、私も海棠さんを守っていきたい。ここで一からやり直そうとする海棠さんを、ずっと支える存在になりたい。