聴かせて、天辺の青
店の外にある広い芝生の休憩スペースで、二人は海を望みながら話しているのだろう。
店内に残された私は二人の様子を想像することしかできない。ここからでは二人の姿は見えないし、声なんて届かないのだから。
「彼女が一方的に話しているように見えたけど……、いったい何者なんだ」
自販機コーナーの掃除を済ませて店内に戻ってきた海斗が、不機嫌そうに報告してくれた。いきなり現れた彼女を早速警戒しているらしい。
「私が知ってるわけないでしょ? 昨日おばちゃんの家まで尋ねてきたそうだけど……、どうしてここに居るってわかったんだろ?」
「ここに来る前に、おばちゃんの家に寄って聞いたんじゃないか? 俺はどうしておばちゃんの家に居るのがわかったのか、そっちの方が気になる」
「そう言えば……、どうやって調べたんだろうね」
おばちゃんの宿は一見すると酒屋にしか見えない。受け入れる宿泊客は主に和田さんたちのような出張者や夏場の海水浴客で、宿だとわかるような大きな看板を揚げていない。
宿だとわかったとしても、特定の宿泊客を見つけることなんて出来るはずないと思う。
「瑞香、誰かに話した?」
「何を? 彼のこと?」
「ああ、誰かに訊かれたとか、知ってるヤツが居たとか……」
「うん、居たかも」
真っ先に思いついたのは麻美。和田さんたちと温泉に行った時、彼に気付いたのは麻美だった。