聴かせて、天辺の青
◇ 別れと始まり
日の出の時間は早くなって、すっかり明るくなった海沿いの道をおばちゃんの宿へ向かって走る。
海棠さんを見つけた防波堤もはっきりと姿を露わして、今朝もいいお天気のように見えるのだけど……
「おはよう、おばちゃん今日は夕方から雨だって」
「おはよう、瑞香ちゃん。夕方から? 昨夜の天気予報では明日からだったのに……、早めに洗濯物取り入れておかないとね」
「うん、私が帰るまでに持ってくれたらいいんだけど、お布団取りこめなかったらごめんね」
「いいよいいよ、入れておくから気にしないで。どうする? 車乗っていく?」
「大丈夫、傘持ってきてるし、きっと私は雨に遭わないと思うから」
「まあ、瑞香ちゃんは晴れ女だから大丈夫かもね、ホント最近の天気予報って当たらないね」
「明日の雨が早まったなら、明日は晴れるかもしれないよ」
「そうだといいね、毎日じめじめして嫌になるよ」
たわいない会話を交わしながら、おばちゃんと一緒に朝食の準備を始める。並べた食器がひとつ足りないことに気づいたら、彼と居たことを思い出してしまう。
彼の居ない生活に慣れたつもりでいたのに。