聴かせて、天辺の青

和室の座卓の上に朝食を並び終えた頃、二階から和田さんたちが下りてくる。すっかり身支度を整えて、「おはよう」とよく通る声で気持ちの良い挨拶。



朝食を食べ終えて、和田さんが箸を置く。



「よし、瑞香ちゃん、今度の日曜日、温泉行くぞ」



唐突に言った和田さんは笑顔。
有無を言わせず一緒に行くと決めつけているのは、来週の土曜日には和田さんたちが帰っていくからだ。定期検査は来週の金曜日まで、土曜日の朝にはここを発つ予定だから残された休日は今度の日曜日だけ。



「いいよ、温泉ね」

「瑞香ちゃん、最後やからワシと一緒に入ろっか?」

「入ってもいいけど和田さんがコッチに来てくれるなら……ね?」



すると和田さんは、くしゃりとカオを綻ばせて舌を出した。傍で見ていた本郷さんと有田さんが、くすっと遠慮がちに笑い出す。



「そんなことしたら、ワシ捕まってまうやん……瑞香ちゃんは釣れんなあ」

「逆でも私が捕まっちゃうでしょう? 残念だけど、またね」


和室が笑いに包まれて、心地よい空気が満ちていく。



ありがとう、和田さん。
私は大丈夫だよ。



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