聴かせて、天辺の青
「ごめんなさい」
もう謝るしかない。
深く頭を下げて謝意を示すと、くすっと麻美が笑う。何事かと顔を上げたら、さっきまで不機嫌だった麻美の顔は一変していた。
「まあ疑われても仕方ないね、私こそごめん、あの時は誰だったか思い出せたのと、ヒロキに会えて嬉しかったのとで舞い上がってしまってたし」
「麻美、本当にごめん」
「いいよ、もう気にしないで。でもね……実を言うと、もう少しヒロキと話してみたかったなあ……っていうのが本音」
からっとした笑顔を見せる麻美の言葉に嘘は感じられない。たぶん麻美は純粋に彼らのファンだっただけ。
それなのに少しでも悪意を感じて、疑ってしまっていた自分が恥ずかしい。
「帰ってきたら一緒に食事にでも出かけようよ、だけど彼は音楽の仕事はもう辞めたから」
「ありがとう、音楽辞めちゃったんだ……、それなのに事務所の人が探しに来たの?」
「うん、すごくお世話になった人が体調を崩してて、彼に会いたがってるんだって。だからこんな所まで探しに来たの」
「そっか……大変だけど早く帰ってきてくれるといいね」
と言って、肩を叩いてくれた麻美は優しい目をしていた。