聴かせて、天辺の青

翌日、温泉で麻美に会ったことを話すと、海斗はくすっと笑った。



「ただの勘違いだったのか、麻美が一番疑わしいと思ったのに……、勘違いされやすい性格って不憫だな」



実は海斗も疑っていたなんて、麻美が知ったら嘆くに違いない。だから黙っておくつもり。



そんなことよりも、勝手に疑ってしまっていた私自身も反省しなければ。私の失礼にも関わらず、麻美は私と食事にでも行きたいと言ってくれたんだから。



「麻美に悪意なんてなかったんだよ、純粋に好きだっただけ。でもね、最近は気になる人がいるんだって」

「そうか……それはリアルの恋のことか?」

「もちろん、リアルの恋だよ。同じ職場の人なんだって、結構男前だったよ」

「温泉で働いてる男前か……なんかいやらしいなあ」

「バカ、変な想像しないでよ、海斗はどうなの? もう車にお金掛けたりしてたらダメだよ」

「わかってるよ、俺だってちゃんと貯金始めたんだから」



海斗が目を細めて、缶コーヒーを口へと運ぶ。視線の先に広がる海は穏やかで、波間にちらつく日差しは日ごとに眩さを増している。頬をくすぐる潮風にも確かな温もりが感じられた。



海斗と河村さんは新しい未来に向かって進み始めている。



私の未来はどこにあるんだろう。

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