聴かせて、天辺の青


食事も摂らないで寝てるなんて、よほど悩みが深いのかもしれない。


食欲がなくなるほど思い詰めてたとしたら……と、またもや嫌な予感が浮かんできたから慌ててかき消した。


そんな事を話したら、おばちゃんが不安になるだけ。


「ふぅん、晩御飯はどうするんだろう? 聞いてこようか?」

「瑞香ちゃん、悪いけど聞きに行ってくれる? そろそろ起きてるかもしれないし、和田さんたちが帰ってくる前に食べてもらってた方がいいかもしれない」

「うん、了解」


本当は行きたくないけど、顔も見たくないけど、おばちゃんに任せておくわけにもいくまい。


階段を上る私は、何故か忍び足。


部屋の扉の前で、ふうと息を吐く。扉の向こうに耳を澄ませてみたけど、テレビの音も聴こえない。


軽く扉を叩いて、一、二、三……とカウントする。五まで数えるつもりが、いつの間にか十まで数えていた。


返事はない。


もう一度、強めに叩いた。


やっぱり返事はない。


「海棠さん? 起きてる?」


扉に顔を寄せて、呼び掛けた。
だけど、待ってみても返事はない。


かき消したはずの嫌な予感が、ふつふつと込み上げてくる。




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