聴かせて、天辺の青
おばちゃんが何か話そうと真剣な目に変わったと思ったら、
「瑞香ちゃん、私ね、年末に東京に行くことにしたの」
と言い切った。少しの迷いもない口調に驚かされた私は、きょとんとするばかり。
「え? もう決めたの? 何で?」
「英司の家に、葵さんの手伝いに行くの。もう連絡してるから大丈夫」
「ああ、そう……」
葵さんこと佐倉葵さんと英司は六月に結婚した。十二月後半には子供が生まれる予定だという。つまり私が海棠さんと出かけた際に、初めて会った葵さんは妊娠中だったということ。
急いで東京に帰ったのは英司の仕事が忙しいという理由だけではなく、葵さんの体を気遣って長居しなかったというのも理由のひとつだろう。
きっと少しでも早くおばちゃんに報告したかったから急いで帰ってきたんだと思う。
「よかったら瑞香ちゃんも一緒に行く?」
「私も? いいよ、行かないよ。私まで行ったら葵さんがびっくりするでしょう?」
「葵さんも英司も泊っていいよって言ってくれてるのよ、私も道中ひとりじゃ寂しいから、瑞香ちゃんも一緒にと思ったのよ」
「ううん、私はここに居るよ。駅まで送迎してあげるから気をつけて行ってきてよ」
おばちゃんは私のことを気遣ってくれたらしい。
私が海棠さんに会いに行くきっかけを作ろうとしてくれたのだろう。そうでもないと、私が東京に行こうなんて思わないから。