聴かせて、天辺の青
私は、ゆっくりと扉を開いた。
そっと隙間から覗くと、陰り始めた弱々しい陽の光が窓から差し込んでいる。そろそろ照明を点けるべきかと悩ましい時間帯。
薄暗さを帯びた部屋の真ん中に敷かれた布団はこんもりと膨らんでいて、そこに彼が横たわっていることがわかる。
だけど、すぐに部屋に入るのはためらわれる。
まずは、息を潜めて凝視してみた。
盛り上がった布団の天辺が、小刻みに上下に揺れている。漏れ聴こえてくる寝息は浅く、忙しく息継ぎをしているよう。
とりあえず生きていることがわかったから、ひとまず安心した。
でも、寝息が荒過ぎる。
抜き足差し足で布団に近づいて、頭があるであろう方向を覗き込んだ。すっぽりと頭まで布団を被った布団が揺れるたびに、漏れ聴こえてくる息は何だか苦しげで、
「海棠さん?」
と呼び掛けた。
待ってみても返事はない。
やっぱり息遣いは苦しそうだ。
布団を剥がそうか、
どうしようかと悩むより早く、手が動いた。
布団の上で丸く縮こまった体が小刻みに揺れて、固く目を閉じた真っ赤な顔は見るからに苦しそう。
恐る恐る触れたおでこは思ったよりも熱くて、じっとりと汗ばんでいる。
私は慌てて、一階に駆け下りた。