聴かせて、天辺の青
「海斗? 何なの?!」
「ストレス発散、瑞香のモヤモヤしてるのを吹き飛ばすんだよ」
海斗が逆方向へとハンドルを切ると、体が反対側へと揺さぶられる。私はシートの端を握り締めて、ぺったりと体を押し付けながら重力に耐えるしかない。肩に力が入って、結構必死になって。
ほんの数分で車は停まったけれど、私にはもっと長く感じられた。残っているのは恐怖ではなく、軽くなった体の感覚。
「ふう……、すっきりした」
満足そうな海斗の顔を見ながら、気付いてしまった。
確かに、私もすっきりしてるかも。
「海斗のバカ」
ぶつけた声が笑ってしまう。
「え? もう一回?」
聞き返した海斗の笑顔を見ていたら、嬉しくなって泣けてきた。