聴かせて、天辺の青
あんまり急いでたから、転げ落ちるかと思った。
最近は自分でも熱なんて出してないし、家族も周りでも熱出した人なんていないから焦ってしまって。
こんな時はどうすればいいのか、頭の中が空っぽになっていて何にも思いつかない。
ただ、おばちゃんに助けを求めなければと、それだけだった。
「おばちゃん! 彼、熱出してる……どうしよう……」
私の顔を見て、おばちゃんが目を丸くしてる。まるで、今朝と同じように。
「ええ? ちょっと待ってよ」
と言って、おばちゃんは食事の準備をしていた手を止めた。すぐに火を消して和室に向かい、戸棚に置いた救急箱から体温計を取り出して私に握らせる。
「とりあえず、熱測って……うん、いいわ、一緒に行くから待ってて」
エプロンを外しながら駆け足で、 再び台所に向かったおばちゃんは冷蔵庫の中から冷却ジェルシートを出してきた。
あまりの手際の良さに見惚れる私を促して、おばちゃんは二階へと駆け上がる。
私もおばちゃんに続いた。