聴かせて、天辺の青
「おはよう、瑞香ちゃん、今日は少し早くない?」
勝手口の戸を開けると、おばちゃんが優しい笑顔で迎えてくれた。
「おばちゃん、おはよう。彼の具合が気になったから、熱はどう? 下がった?」
早めに来たのには訳がある。
やはり、彼の具合が気になっていたから。
少なくとも昨日、海に落ちてびしょ濡れになったことが発熱の原因のひとつになっていることに間違いないだろう。
知らん顔して、彼を放ったらかしにしておく訳にはいかなかった。
「うん、大丈夫よ。さっき見てきたけど落ち着いて寝てるみたいよ。熱も下がってるみたいだし」
おばちゃんは穏やかな表情を崩さない。本当なら、その顔を見たら安心できるはずなのに不安は消えない。
「でも、おばちゃん? 朝は熱が下がるものなんでしょう? また上がってきたりしないかなあ?」
「それは何とも言えないけど……あまりにも具合が悪そうなら、診療所に連れて行ってあげようか?」
おばちゃんの答えに、申し訳ない気持ちが込み上げてくる。
やっぱり、私は余計なことをしてしまったのかもしれない。罪悪感と苛立ちが交錯して、自分がすべきことがわからなくなる。
「ううん……その時は、私が連れて行くよ。ごめんね」
と返して、私は洗面所へと向かった。