天使な悪魔
「本当に驚いたよ。」


彼の灰色の眼は異国の生まれを思わせる。


「驚いた…?」


グラスに映る自分の顔。目が泳いでいて緊張感で明らかに動揺している。


「こんなこともあるんだなって。」


ああ、なる程確かに――


「そうですよね、まさか泪さんと地元が一緒でここでも会うなんて思いませんでした。」


本当造りモノみたいな綺麗な顔。至近距離で直視なんか出来ない。私はまた一口ジュースを啜った。


「地元…?」


「今朝、駅でお会いしましたよね?」


謝ろうとしてくれてたとも知らずに…。

「…ああ、そうだったね…。」


「また目障りなんて言われたらどうしようか内心は怯えてたんですよ。」


「……。」


しまった…。黙り込んでしまう泪さんに私は咄嗟にフォローした。


「でも、全然気にしてないですから!」


ひたすら笑顔を作る。凄く反省してるみたいだし、気に病ませたら悪いもんね…。


「素直なんだね…だからちゃんと謝りたいって思ったのかもしれないな。」


グラスの中の凍の固まりが微かな音をたてて割れた。
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