天使な悪魔
Colorless
(あーあ…壊れちゃった…。)


真っ二つに割れたリボンを見つめる。高価では無かったけど、大切なモノだった。しかも片方の部分、どこかに落としちゃったみたい。


(もう使えないし、新しいのを買おう・・・。)


ポケットにしまうと急いでバイト先に向かった。




「おはようございます。」


控室に入り、着替える。


(今朝の嫌な事事は忘れて、仕事に取り掛かろう・・・。)


「おはよう、七瀬。何だか元気無いよ?」


バイト仲間で友人でもある広江が声を掛けて来る。


「おはよう、広江。それが今朝寝坊しちゃって未だちょっと眠いの。」


気分が落ち込んでいるのを何とか誤魔化す。


「あははっ!立った侭寝ないようにね。あの人に見られたらアウトでしょ!」


出勤前のOL、サラリーマン。
馴染みのお客さんにオーダーされたドリンクを運びながら笑顔を作る。私は半年前から、この喫茶店でバイトをしていた。


「すみません。」


斜め後ろから、よく知っている声がした。艶やかな栗色の髪、中世的な顔立ち、優しげな雰囲気―・・・。


「おはようございます。ご注文は?」


平然を装いながら挨拶する。


「おはよう。」


彼は目を細めながら笑った。緊張してしまい、思わず目線を逸らしてしまいたくなる。

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