天使な悪魔
部屋の中は薄暗い。


「小桃ちゃん、ここやっぱり出よ・・・」


「七瀬ちゃんはお人好しだね。」


小桃ちゃんはこちらを振り返らない。


「だって直ぐに人を信じちゃうんだもの。」


そして笑い出す。


「誰かから逃げてるみたいだから手を貸したらころっと騙されて。行方不明のあたしが声かける訳ないでしょう?」


小桃ちゃんの眼の色が金色に染まっていく。




まさか小桃ちゃんも…



妖魔の仲間なの!?そんな訳・・・



バリッ…!




床下を突き抜け、幾つもの氷柱が芽を出し、伸びていく。


部屋中が冷凍庫のように冷たい。氷柱だらけで辺りがよく見えない。


私はドアノブに手をかける。


「無駄よ!」


幾つもの氷の破片が髪を掠め、右頬擦れ擦れの壁際に命中していた。一束の髪が床に落ちる。



全身に鳥肌がたつのを感じた。




「逃げたら痛い目に遭っちゃうよ?」


パリッ…パリパリッ…!


氷の固まる音がする。両腕、下半身の辺りが酷く冷たい。気付いた頃には身体中が氷に包まれ凍っていく。


「小桃ちゃん!止めてっ・・・・・!」


凍える程の冷たさに呼吸をするのもやっとになる。身体を包む氷は首の辺りにまで這い上がってくる。
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