天使な悪魔
氷の冷たさがじんじんと身体に染み付いている。


開かれた扉には髪を解き、ベレー帽を被った「彼」が立っていた。


あれは・・・?


黒いブラウスは今朝の雫さんと同じ格好――


でも・・・髪型は・・・


エメラルドの光を放つと、黒いブラウスから純白のドレスに近い衣に変わり
背中には純白の翼が生えている。深緑色の片眼。



彼は、雫さんじゃない。



泪さんだ――


この白い翼…泪さんは妖魔じゃなかったの?

二人は兄弟なんでしょ…?



「彼女は関係無い筈だ。」


「あら、それはどうかしら。」


小桃ちゃんは鼻で小馬鹿にしたように笑う。


「ご自分の立場を弁えているなら尚更よ。神使(しんし)のあなたが契約を結んでしまった以上、もう取り返しはつかないのよ。周りの者も命を狙われるわ。」

神使…?どう云うこと?


泪さんは震える手で拳を握りしめた。まるで昨晩、乃亜さんにナイフで突き付けられた雫さんのように・・・。


「あら?何も言い返せないのね?確かに弱い天使様の力じゃ押さえつけることも出来ないわね?」


小桃ちゃんは両足をバタつかせながら洗い場に座り込む。


「小桃、今日はくたびれちゃったー。七瀬ちゃんとも話したかったけど…邪魔入ったしいいや。ふぁー何だか眠いっ…じゃーね。」


壁に楕円形の光の穴に小桃ちゃんとは静かに中へと消えて行った。


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