天使な悪魔
「大丈夫…?」


泪さんが私にそっと手を差し出す。


「ありがとうございます。」


私は彼の手を取り、頭を下げた。


「お礼なんかいい。ごめんね…怖い目に遭わせて。」


「どうして泪さんが謝るんですか?」


泪さんの目はすっかり影を落としていた。


「僕に関わったせいで、七瀬ちゃんが狙われた。」


どうして――?

たったそれだけの理由で…?


「雫に会ったんだよね?」


泪さんの声が沈む。

「はい。危ない中、助けて頂いて感謝しています。」


「…そっか。」



泪さん、雫さん。


緑と紫――


それぞれ異色の片眼を持つ。


「僕は、呪われた存在なんだ。本当は誰とも関わってはいけなかった。」


白い翼は消え、衣も白いドレスから黒いブラウスへと元の形に戻っていた。


「君に嘘を吐いた罰なのかな…。雫の振りを――」


「弟さんのことはお気に」
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